都市気候の形成による環境の悪化に対して、有効な対策は非常に少ない。特に日本の場合、夏期の冷房による電力消費の増大とそれによる気温の上昇は、深刻な都市問題の一つであり、地球温暖化の原因の一つでもある。都市内の緑地は、植物の蒸発散による潜熱放出が大きいため、高温乾燥化を緩和する機能を持つと考えられ、緑地の存在は、いわば、パッシブな冷房装置として、都市の高温化に対する数少ない対策の一つである。保水性のよい材質で、道路や壁面を覆うのも同等の効果が望まれる。 都市緑地や保水性材料舗装面(以下まとめて緑地とよぶ)の微気象の測定は、気温、湿度分布の測定、熱収支の測定などが多く行われており、緑地などが低温であることや潜熱輸送量が大きいことが示されてきたが、緑地の影響がどの程度の範囲まで及ぶかや、緑地による冷却効果がどの程度などの、都市計画に必要な知識については、まだ不足している部分が多い。 本研究では、従来の地上部を中心とした測定に加えて、従来測定例の少ない地下部の温度分布にも着目した。地温は深ければ深いほど、長期の地表面上温度を平均、平滑化した値となるため、長期の地上部での気温の影響を地温分布測定からある程度推定することが可能である。長期的な緑地による冷却効果も、緑地内外の地温分布から推定できる可能性がある。 新宿御苑を対象として、緑地内外での気温、地温分布、風速、熱収支などの測定を行った。このような測定をもとに、都市緑地での地温分布の実態や、熱収支の推定を行った。
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