平成11年度は市販果汁飲料であるりんごジュース(クリア、混濁の両タイプ)とオレンジジュースについて、その水希釈倍率や透過光路長を変化させながら、250nmの紫外線に対する透過率(水を100%とする)を自記分光光度計により測定した。またガラスシャーレ上で液厚を変えながら紫外線殺菌(紫外線ランプ15分間照射)を施した供試ジュースについて、かびの発生を指標とする保存試験を行った。デジタルカメラで撮影した保存試験中の培地画像についてパソコンによる2値化処理(かびを黒、培地を白)を行い、得られたかびコロニー面積値を用いてかびの増殖特性を定量化した。 供試ジュースの濃度・透過光路長と紫外線透過率との関係をランベルトベールの法則logT=-kcd(k:吸光係数、c:濃度、d:光路長)に基づきプロットし、その回帰式を用いた外挿法により、濃度100すなわち無希釈ジュースの紫外線透過率を求め、その液厚と紫外線透過率の関係を得た。またかびコロニー面積の経時変化曲線から菌の生存率ν=exp(-μτ)(τ(h):成育遅れ時間、μ(1/h):比増殖速度)を求め、殺菌時の液厚との関係を求めた。その結果、薄層流による液厚の低減や噴霧による微粒化の操作が液体食品の紫外線殺菌率を増加させることが推察された。また透明りんごジュースでは液厚2mm以下で100%近い殺菌率(100-ν、%)を得ることが示された。全ての供試ジュースにおける紫外線透過率と殺菌率の関係は両対数紙上で異なる2直線により表された。すなわち紫外線透過率約8.8×10^<-3>(%)を境に、殺菌率に与える透過率の影響は大きく変化することが分かった。
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