研究概要 |
平成11年度の研究成果より,液体食品のように様々な成分や色彩を有する材料に紫外線殺菌を適用するには,これらを薄層化することにより見かけの紫外線透過率を増加させる方式が有効であると示された。そこで平成12年度の研究では,液体食品の透過光路長のみならず単位体積あたりの表面積をも増加できる噴霧操作を適用して,微粒化した液体への紫外線殺菌を実験的に行った。すなわち噴霧チャンバと紫外線照射部から構成される噴霧式紫外線殺菌システムを構築し,供試液体の流量や噴霧圧力といった操作条件が噴霧粒径や回噴霧流速といった噴霧特性に与える影響を明らかにした。蒸留水を用いた二流体ノズルによる噴霧試験の結果,噴霧流速は噴霧圧力に比例して増加するのに対して噴霧粒径は反比例することが確認された。一方ノズルへの供試液体の流量は噴霧特性に大きな影響を与えなかった。紫外線による噴霧液の殺菌実験では,殺菌の指標として紫外線感受性の高いと思われる乳酸菌(ヨーグルト)を供試飲料(蒸留水,透明・混濁の2種類のりんごジュース,オレンジジュース,牛乳)に200倍希釈で添加し,その殺菌率をATP濃度の変化により求めた。予備実験の結果,1回の紫外線照射では十分な殺菌効果を得られないことが判明したので,噴霧と紫外線照射を繰り返すことにより見かけの紫外線照射時間を長くして殺菌効率の向上を図った。その結果,蒸留水には繰り返し回数に応じた菌の減少(最終的に殺菌効率は76.9%)が,透明タイプりんごジュースでは若干の殺菌効率の改善が確認された。顕著な殺菌効果の得られなかった混濁タイプりんごジュースと牛乳については,紫外線照射強度を向上できる装置設計をその解決の課題としている。
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