研究概要 |
(1)前年度に引きつづき,放牧を模してごく頻繁に剪葉処理した実験群落において,シバの茎数と時期別収量の推移を追跡し,茎数密度が年間を通して15,000茎/m^2前後の高水準を確実に維持すること,頻繁な剪葉下においても比較的高い生産性を実現する能力が高いことを確認した。また,時期別にシバソッドを掘取り採取し,群落を構成する直立茎の中心部分は,ほふく茎各節群の基部側に位置するA分げつにより構成され,一方,頂端側のB分げつは通常多くが休眠していて,A分げつの枯死等による減少分を補う役割を果たすに過ぎないこと,また,これら1次分げつの他にかなりの2,3次分げつが生じ,茎数密度維持の一翼を担っていることを明らかにした。 (2)次に,群落下のほふく茎茎端を一定数標識して,生育期間中のほふく茎および各分げつの発育経過を堀取法により調査し,年次にかかわりなく節群の形成数は年間20前後,ほふく茎の伸長量は30cm程度に過ぎないことを確認した。加えて,前もって育苗しておいたほふく茎を裸地に移植して発育経過を連日調査し,孤立条件下では節群の形成は著しく迅速であること,しかも,順次形成される各節群からは,節根,A分げつ,およびB分げつが一定の間隔をおいて差動的,かつ規則的に生じることを認め,母茎ほふく茎およびそれに付随して生じる1次分げつの発生,生育が密度の濃淡によって多様に変異する特性を持つことを知った。さらに,解剖学的調査により,ほふく茎茎端におけるファイトマーの形成過程において,A分げつ芽の分化・発育がB分げつ芽より概略,1節群形成期間先行することを明らかにし,この差動性が両分げつ芽のシンク活性の違いを生じる一因であると推察した。
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