研究概要 |
シロクローバの種子繁殖生態と被食ストレスとの関係について解析した。以下の仮説を検証するために,大葉型と小葉型のシロクローバを使い摘葉処理実験を行った。(1)大葉型は小葉型より摘葉処理の影響を強くうけ,頭花数や頭花サイズをより減少させる。(2)種子の分散範囲も摘葉によってより大きく縮小する。実験の結果,これらの仮説はおおむね支持された。しかし,シロクローバ地上部の損失程度の軽い処理実験では複雑な様相を呈した。大葉型の中には,処理によって頭花数が著しく減少する集団だけでなく,ほとんど変化しないか,または逆に増加する傾向にある集団も見出された。後者の集団は軽度被食環境においてすら,種子繁殖能力を高く保持できるものと期待される。 野外集団を対象とした種子繁殖生態の調査をあわせて行った。シロクローバの集団サイズと結実率,送粉昆虫の訪花頻度の間には明瞭な関係があった。極小サイズの集団では送粉昆虫の訪花が概して少なく,1頭花当りの訪花頻度も低下した。その結果,結実率が著しく低下した。一方,種子サイズは集団サイズにかかわらず一定であった。本調査とこれまでの研究成果から,シロクローバの小パッチが孤立して分布するような放牧草地では,結実の低下が種子生産量の減少を引き起こし,種子更新上の重大な制約になりうることが指摘された。自己修復のためには,結実低下を導かないようなシロクローバ成体の分布パターンを確保することが前提といえる。 大きな成果は,野外集団について種子更新プロセスを解析した点である。暖地において種子更新している可能性の高いシロクローバ集団を発見し,その動態研究に着手した。本研究とこれまでの研究成果,内外の研究情報から,種子更新を促進する条件を考察した。
|