研究概要 |
シロクローバの種子繁殖生態の詳細と摘葉ストレスへの可塑的応答を解析するために,摘葉ストレスの強弱と資源量の大小を組み合わせた圃場実験を行った。材料には,大葉型-小葉型という体制変異を含むように,代表的な2品種を選んだ。摘葉ストレスや資源量の違いが,大葉型と小葉型の種子繁殖に関与する形質にどのように影響するか,同形質の可塑性の程度とパターンについて解析した。特に注目した形質は,頭花数と頭花サイズ,1莢内粒数と種子サイズの4形質である。頭花レベルと小花レベルで,それぞれどのような可塑性を示すかに注目した。主な成果は以下のとおりである。 第1に,摘葉ストレスに対する可塑性の程度は形質によって大きく異なった。頭花数の可塑性が最大となり,他の3形質の可塑性はやや低かった。いずれの形質値も強ストレスによって低下した。シロクローバの1莢内粒数と種子サイズのこのような変化は,これまでほとんど報告されていない。第2に,弱ストレスに対する可塑的応答はやや複雑な様相を呈した。これは,弱ストレスがソース-シンク上の変化を導くこと,形質間トレードオフがありうることによると考えられた。特に,頭花数と頭花サイズの可塑性は,トレードオフによって強く制約された。第3に,資源量の違いが,摘葉ストレスへの可塑的応答を微妙に変化させうることが示唆された。特に,大葉型の,開花の遅い頭花の種子サイズに影響した。第4に,長期にわたる個体開花期の間,1莢内粒数は比較的高く維持された。種子サイズは開花後期に低下する傾向にあった。開花時期の違いによって,質の異なる種子が形成されうることが示唆された。 一方,野外集団の調査から,シロクローバの種子更新には,高結実による大量の種子生産量の確保と,長期にわたる発芽個体の発生が不可欠であることが確認された。
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