研究概要 |
シロクローバの種子繁殖生態の詳細を知るために,大葉品種Kopuと小葉品種Tahoraを使い,一連の実験を実施した。主な成果は以下のとおりである。標準環境実験から,大葉型は小葉型より頭花サイズ,小花サイズが大きく,頭花の着生位置を広く分散させる性質をもつことが確認された。次に,摘葉ストレスと養分量への可塑的応答を解析するために,これら2要因を操作した実験を行った。その結果,摘葉ストレスに対する可塑性の程度が形質によって大きく異なるものの,1莢内粒数と種子サイズでさえ強ストレスによって低下することが確認された。一方,弱ストレスに対する可塑的応答は複雑な様相を呈した。資源量の違いは,摘葉ストレスへの可塑的応答を微妙に変化させた。自己修復のためには,放任条件下だけでなく,摘葉ストレス条件下でも,頭花数が多く,個体開花期が長期にわたり,不斉一な種子休眠性をもつ個体が有益なものと推察された。 野外集団を対象とした種子繁殖生態の調査を実施した。シロクローバの集団サイズと結実率,送粉昆虫の訪花頻度の間に明瞭な正の関係があった。極小サイズの集団では送花昆虫の訪花が概して少なく,1頭花当りの訪花頻度も低下した。その結果,結実率が激減した。シロクローバの小パッチが孤立して分布するような放牧草地では,結実の低下が種子更新上の重大な制約になりうる。自己修復のためには,結実低下を導かないようなシロクローバ成体の分布パターンを確保しておくことが前提となる。
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