研究概要 |
本研究は、保健的機能性に優れた乳酸菌を利用することにより、付加価値の高い食肉製品を開発するための研究である。これまで、プロバイオティック乳酸菌として知られるヒト腸管由来のLactobacillus gasseriの食肉製品への応用を考え、食肉製品に利用できるような十分な食塩耐性や亜硝酸耐性を備えた変異株の作出を試みた。また、乳酸菌の作用により食肉タンパク質から生理活性成分を作らせるために、菌株の検索を試みた結果、Lactobacillus rhamnosus FERM P-15120が良好な菌株として残された。 Lactobacillus rhamnosus FERM P-15120を用いて調製した発酵豚肉ホモジネイトは、高いアンジオテンシン1変換酵素,(ACE)阻害活性と血圧降下作用を示した。この活性は、発酵中に生成するACE阻害ペプチドによることが判明した。このペプチドを各種HPLCの組合せにより精製し、構造を明らかにした結果、Val-Phe-Pro-Met-Asn-Pro-Pro-Lysの配列を有するオクタペプチドであった。この配列は、豚骨格筋ミオシン重鎖中(76-83)に存在するものであり、プロテアーゼの作用によりミオシン重鎖が分解して生成するものと見られた。このオクタペプチドを化学合成し、ACE阻害活性を検討した結果、比較的高い活性(IC50=66.0uM)を示した。発酵条件や菌株の変異処理により、発酵ホモジネイトのACE阻害活性が変化することも明らかにされた。さらに、発酵豚肉ホモジネイトの機能を検討したところ、ストレス性胃潰瘍の予防効果があることが、ラットの水浸拘束試験により明らかにされた。現在、活性成分の精製を進めている。
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