本年度はヒツジを用い、濃厚飼料主体給時にルーメン・ファイブ(RF)を投与しないもの(濃厚飼料-RF区)とルーメン・ファイブを投与するもの(濃厚飼料+RF区)を設定し、唾液分泌動態・反芻行動・前胃運動性・第一胃内pHを24時間にわたり連続的に測定した。動物はサフォーク系ヒツジ6頭を用い、ルーメンカニューレ、耳下腺カテーテル、第二胃筋電位測定用電極を装着した。飼料は、乾草(0.1%BW)および濃厚飼料(1.6%BW)を1日2回に分け、午前8時30分、午後4時30分に給与した。測定項目は第一・二胃運動(A型・B型)、反芻、第一胃内pH、第一胃内VFAおよび乳酸濃度、第一胃内乾物消化率であった。測定は24時間連続的に行われ、全ての測定項目についての動物からの情報はトランスデューサーにより電気変化に変換され、デジタル信号に変換しコンピューター内に記録・保存した。 1日の総A型運動回数に有意差は見られなかったが、A型運動に占める反芻の割合が+RF区では有意に多くなった。特に深夜から早朝にかけて反芻の回数が多くなった。B型運動は+RF区で減少する傾向にあった。1日の唾液分泌量は+RF区で多くなる傾向が見られた。経時的には採食時の増加が+RF区で大きかった。第一胃内pHの日内変動幅は+RF区で小さい傾向にあり、特に採食開始後のpH低下割合が-RF区より有意に小さかった。第一胃内総VFA濃度は+RF区で有意に高くなり、酢酸は有意に、プロピオン酸は増加の傾向にあった。+RF区での第一胃内乾物消化率は乾草消化率が低い傾向、濃厚飼料消化率が高い傾向にあった。 以上のことから、濃厚飼料主体飼料給与時に加えられた第一胃内への機械的刺激は、第一・二胃内の機械受容器を刺激し、胃運動総数は変化させないものの反芻の割合を増加させ、その結果唾液分泌量の増加・胃内pHの安定を引き起こし、最終的に前胃内発酵性の向上と消化率の向上を引き起こす可能性があることが示めされた。
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