本年度はウシを用い、維持量の濃厚飼料給与時に第一胃内へ機械的刺激を加えないもの(-Stim条件)と加えたもの(+Stim条件)を設定し、唾液分泌動態・反芻行動・前胃運動性・第一胃内pHを測定した。動物はホルスタイン種ウシ2頭を用い、ルーメンカニューレ、耳下腺カテーテル、第二胃筋電位測定用電極を装着した。飼料は、濃厚飼料(1.6%BW)を1日2回に分け、午前8時30分、午後8時30分に給与した。測定項目は第一・二胃運動(A型・B型)、反芻、第一胃内pH、第一胃内VFAおよび乳酸濃度、第一胃内固形分消失率であった。測定は24時間連続的に行われ、全ての測定項目についての動物からの情報はトランスデューサーにより電気変化に変換され、デジタル信号に変換しコンピューター内に記録・保存した。 1日あたりのA型胃運動は-Stim条件、+Stim条件各々1120回、1186回となり+Stim条件で増加傾向にあり、さらにA型のうち反芻あるいは偽反芻を伴ったA型運動の割合で増加傾向にあった。1日の唾液分泌量は+Stim条件で多くなる傾向が見られ、経時的には2回の給餌後および夜間に+Stim条件で有意に高い値を示した。第一胃内pHは常に+Stim条件で高い値を示し、給餌前で-Stim条件(6.2))に対し+Stim条件(6.6)、採食後の低下幅も+Stim条件で小さく給餌3時間後の値で+Stim条件で有意に高い値を示した。第一胃内総VFA濃度は給餌前(80〜100mmol/l)から30mmol/l上昇した。+Stim条件で酢酸が増加の傾向にあった。第一胃内固形分消失率には両区の間に差は見られなかった。 以上のことから維持レベルでの濃厚飼料給与時に加えられた第一胃への機械的刺激は、第一・二胃内の機械受容器を刺激し、第一・二胃運動を増加させるとともに、反芻の割合を増加させ、その結果として唾液分泌量の増加・第一胃内pHの安定を引き起こすことが示された。しかし、維持レベルでの濃厚飼料給与においては前胃内発酵性と消化率の向上には差を示さなかった。
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