反芻動物の第一・二胃内へ加えられた機械的刺激が濃厚飼料給与時の唾液分泌・前胃運動性・第一胃内消化性に与える影響が調べられた。動物は第一胃カニューレ、耳下腺カテーテル、第二胃筋電位測定用電極を装着したヒツジおよびウシを用い、飼料は維持レベルの濃厚飼料主体飼料あるいは濃厚飼料のみを1日2回に分け給与した。第一胃内消化性はVFA濃度およびナイロンバッグ法による第一胃内固形分消化率を測定した。ヒツジにおいて1日の総運動回数に有意差は見られなかったが、A型運動に占める反芻の割合が刺激を加えた条件(+Stim条件)では有意に多くなった。特に深夜から早朝にかけて反芻の回数が多くなった。B型運動は+Stim条件で減少する傾向にあった。1日の唾液分泌量は+Stim条件で多くなる傾向が見られた。経時的には採食時の増加が+Stim条件で大きかった。第一胃内pHの日内変動幅は+Stim条件で小さい傾向にあり、特に採食開始後のpH低下割合が+Stim条件より有意に小さかった。第一胃内総VFA濃度は+Stim条件で有意に高くなり、+Stim条件での第一胃内乾物消化率は乾草消化率が低い傾向、濃厚飼料消化率が高い傾向にあった。ウシにおいては1日あたりのA型胃運動は+Stim条件で増加傾向にあり、A型のうち反芻・偽反芻を伴ったA型運動の割合で増加傾向にあった。1日の唾液分泌量は+Stim条件で多くなる傾向が見られ、給餌後および夜間に+Stim条件で有意に高い値を示した。第一胃内pHは常に+Stim条件で高い値を示し、給餌前で0.4高く、採食後の低下幅も+Stim条件で小さかった。第一胃内固形分消失率には両区の間に差は見られなかった。以上のことから、濃厚飼料主体飼料給与時に加えられた第一胃内への機械的刺激は、第一・二胃内の機械受容器を刺激し、胃運動総数は変化させないものの反芻の割合を増加させ、その結果、唾液分泌量の増加・胃内pHの安定を引き起こし、最終的に前胃内発酵性の向上と消化率の向上を引き起こす可能性があることが示めされた。
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