(目的および方法)昨年、ヤギにおいてデンブン添加によるエネルギー摂取量の増加が全身グルコース代謝回転速度およびタンパク質合成速度を増加させることを明らかにした。本年度は反芻家畜のグルコースおよびタンパク質代謝に対する摂取エネルギーの量および質の効果をさらに検討するために、ヤギを用いてタンパク質摂取量が一定の条件下で以下の2つの実験を行った。 実験1)非タンパク質エネルギー摂取量の増加の影響 乾草、トウモロコシ、大豆粕からなる飼料を用い、粗タンパク質摂取量を維持の1.5倍量で一定にしつつ、これらの配合割合、給与量を変えることによってエネルギー摂取量を維持量、維持の1.5倍量、維持の2.0倍量とした。 実験2)炭水化物の給源の違いの影響 エネルギー摂取量および粗タンパク質摂取量を維持の1.2倍量とし、エネルギー摂取量の30%をデンブン、デンブンとショ糖(1:1)、ショ糖で給与した。 いずれの実験においても処理切り替え後17日目に、採食後3時間より4時間にわたり[U-^<13>C]グルコース、[^2H_5]フェニルアラニン、[^2H_2]および[^2H_4]チロシンを用いた同位元素希釈法を行い、全身グルコース代謝回転速度およびタンパク質合成速度を測定した。 (結果)実験1において非タンパク質エネルギー摂取量の増加は全身グルコース代謝回転速度および全身タンパク質合成速度の両者を直線的に増加させた。これに対し、実験2では炭水化物給源の違いはこれらのいずれの速度にも有意な影響を及ぼさなかった。以上の結果および昨年度の結果から、反芻家畜の全身におけるグルコース代謝回転速度およびタンパク質合成速度は、1)粗タンパク質摂取量が一定であってもエネルギー摂取量の増加に伴い増加すること、2)摂取した炭水化物の種類による影響は受けないことが示唆された。
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