研究概要 |
研究初年度である本年度は、研究当初に購入を予定していた倒立顕微鏡とマニピュレーターシステムの機種選定とセットアップに時間を費やした。最終的に、ニコン社製倒立顕微鏡とナリシゲ社製マイクロマニピュレーターシステムを選定し、セットアップした。また、合わせて種々の周辺機器を購入して、ようやく当研究室に核移植実験を行うことのできる研究環境を整えることができた。 まず当研究室の定法である無血清TCM199中で体外成熟させた卵子の除核適期を知る目的で、卵子中の核の変化を体外成熟開始14時間後から24時間後まで経時的に観察した。その結果、核成熟の完了を示す第2減数分裂中期像の見られる卵子の割合は、成熟開始14,16,18,20,22及び24時間後において、それぞれ0,9.1,31.4,80.9,88.1及び97.8%となり、成熟時間の経過に伴って第2減数分裂中期像の観察される卵子の割合が増加し、成熟開始22から24時間後には核成熟のほぼ完了していることが示された。そこで、以降の実験では、核移植のレシピエント卵子として用いる体外成熟卵子の除核を、体外成熟開始22から24時間後に実施することとした。 次に、異なるドナー細胞を用いて作出された核移植胚の体外発生能を比較検討した。ドナー細胞には屠体卵巣の小卵胞より得られた卵丘細胞と体外受精由来の桑実期胚割球を用いた。現在までのところ、胚盤胞への発生率はそれぞれ5.3%と10.6%であり、桑実期胚割球を用いた際に高い発生率が得られる傾向を示している。 今後はさらに例数を積み重ねながら、技術とシステムの安定を図り、核移植胚の発生率を安定させたうえで、その正常性について検討を進める予定である。
|