平成11年〜12年度の2年間に渡って科学研究費補助金を受け、研究代表者によって雄豚精のう腺で発見された新規リラキシン様蛋白質の精子への結合とその生理機能の解明に挑戦し、数々の新知見を得た。以下にその主要な成果を記す。 1.特異抗体の作製と時間分解蛍光免疫測定法(TR-FIA法)の開発:報告者により精製された本蛋白質を抗原として高い特異性を持つpolyclonal抗体を作製した。これらを基に、時間分解蛍光を用いた全く新しい免疫測定法、即ち時間分解蛍光免疫測定法(Time-resolved fluoroimmunoassay;TR-FIA)を世界に先駆け開発することに成功した。本法により、雄豚精漿中に存在するリラキシン様蛋白質の濃度や精子への結合状態を、正確、かつ迅速・簡便で高感度な測定の実現が可能となった。 2.豚精子に対する結合と結合部位の同定:上述のTR-FIA法を用いて、リラキシン様蛋白が豚精子の細胞膜に特異的に結合し、それが精子の先体(頭帽)、中片部および尾部であること、さらに、これらの部位の細胞膜を構成している蛋白質とリン脂質の両者に結合することを明らかにし、本蛋白質が精子細胞膜上の受容体を介して作用発現しているとの機能解明への重要な糸口を見出した。 3.豚精子における生理機能の解析:リラキシン様蛋白質はコレステロールのdocking蛋白としての機能を合わせ持つ可能性のあること、本物質の添加により精子の受精能獲得を誘起することなどを主に明らかにすると共に、本蛋白質が精子の受胎性を診断する上での有効な指標となり得ることを示唆した。
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