本年度は、反すう動物と単胃動物の中枢食欲制御ならびに糖代謝調節におけるヒスタミンとGLP-1の作用および相互関係について検討を行った。実験動物としてシバヤギとラットを用いた。シバヤギの満腹中枢(室傍核)へGLP-1を連続投与すると採食が抑制される傾向があった。GLP-1とヒスタミンH1受容体遮断薬を同時に投与すると、採食抑制効果がなくなった。これらの結果から、ヒスタミンはGLP-1の採食抑制作用を促進的に修飾することが示唆された。ヒスタミンH1受容体遮断薬のみを連続投与すると、初めに採食量が増加する傾向があったが、試薬投与後半になると、逆に採食が抑制される傾向にあった。このとき、室傍核のヒスタミン量は増加し、続いて血中グルコース濃度も増加した。これらの結果から、中枢ヒスタミン神経系が活性化すると血中グルコース濃度が増加することが示唆された。試薬投与後半の採食抑制は、血中グルコース濃度が増加したためと考えられた。ヒスタミンH1受容体遮断薬によるヒスタミン増加は、同時にGLP-1が投与されることにより消失したので、GLP-1には、ヒスタミン神経の活性化を抑え、結果的にグルコース濃度増加を抑える作用があると推察される。ラットの室傍核にGLP-1を連続投与すると、室傍核のヒスタミンが減少した。GLP-1を側脳室に投与すると、採食が抑制されたが、同時にヒスタミンH1受容体を遮断、あるいはヒスタミンを枯渇させると、GLP-1による採食抑制効果が弱まる傾向があった。したがって、ヒスタミンがH1受容体を介してGLP-1の採食抑制作用を促進する機序の存在が示唆された。
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