研究概要 |
(1)雌性生殖関連遺伝子の探索 雌性生殖系3倍体(3n)フナと有性生殖系2倍体(2n)フナの各卵巣で発現している遺伝子をディファレンシャルディスプレイ法により比較した。3n及び2nフナ各5個体の卵巣からmRNAを抽出し、ランダムへキサマー及びオリゴdTプライマーと逆転写酵素によりcDNAを作製した。各cDNAを鋳型として20種類の任意プライマー(デカマー)の組合せ(190通り)でPCRを行い、その増幅産物を電気泳動により分離した。発現差のみられた12ヶのバンドについてクローニングし、塩基配列を決定した。また、これらのジゴキシゲニン標識プローブを作製し、各倍数性フナに対してノーザンブロットハイブリダイゼーションを実施した。しかし、3n(または2n)フナ卵巣特異的な遺伝子発現は確認できなかった。これまで、目的の遺伝子は単離できていない。今後は、他の生物における既知の遺伝子(細胞周期関連遺伝子など)情報からいくつかの候補遺伝子を選定し、フナにおいてその遺伝子をクローニングし、倍数性による発現差異を調べることも検討する。 (2)雌性生殖フナゲノムに特徴的なDNA領域の探索 3nと2nの各フナからゲノムDNAを抽出し、制限酵素(BglII,HindIII,BamHI)で消化しアダプター付加後PCR増幅を行った。生じた各DNA断片(アンプリコン)を用いてサブトラクティブハイブリダイゼーションを行い(RDA:representational difference analysis法)、3n由来のDNA領域を得た。これらのクローニング、塩基配列の決定を行い、さらにプローブを作製して各種コイ科魚類のアンプリコンに対してサザンブロットハイブリダイゼーションを行った。その結果、大多数の多倍数性フナとキンギョにのみ共通するDNA多型があることがわかった。引き続きRDA法によるDNAマーカーの探索を行う。
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