1雌性生殖関連遺伝子の探索 (1)フナ卵巣から昨年度単離した減数分裂型Wee1(細泡分裂制御因子の一つ)遺伝子の発現をRT-PCRおよびノーザンハイブリダイゼーション法により調べた。その結果、卵巣組織特異的発現は確認できたが、雌性生殖系3倍体(3n)フナと有性生殖系2倍体(2n)フナで有意な発現量の差は認められなかった。 (2)雌性生殖3n卵と有性生殖2n卵で発現量の異なる遺伝子を網羅的に同定するために、各卵巣から調製したcDNAを用いて相互にサブトラクションを行い、計334個の分子クローンを得た。塩基配列決定、相同性検索を行い、計236種類の遺伝子(132の既知遺伝子と104の未知遺伝子)に分類した。このうち、細抱周期に関係又はクローンが重複するもの、計11種類の遺伝子についてRT-PCRとノーザン法による発現解析を行った。その結果、1つの遺伝子(DOCK遺伝子に相同)が3n卵に、2種類の遺伝子(ApoE遺伝子に相同と機能未知)が2n卵に特徴的に発現していることか確認できた。これら3種類の遺伝子は、雌性生殖に関連する有力な候補遺伝子である。 2雌性生殖系3nフナのゲノムDNAの特徴付け マイクロサテライトをプライマーとしてPCRを行い、3nゲノムに特有と思われた約1500bpの断片を得た。クローニンク及び塩基配列を決定し各地から採集したフナ及びキンギョに対してPCR及びサザンハイブリダイゼーション解析を行った。大部分の3nフナは1500bpと1300bpの2つの断片をもっていたのに対し、2nフナは1300bpのみの断片を、キンギョは1500bpのみの断片を所有していた。また、系統樹解析から、3nの2つの断片の由来はキンギョと2nのDNAと考えられた。本結果は、3nギンブナのゲノム構成におけるキンギョゲノムの関与というこれまでの我々の説を支持した。
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