研究課題/領域番号 |
11660291
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小野 悦郎 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (00160903)
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研究分担者 |
田原口 智士 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助手 (30312416)
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キーワード | トランスジェニックマウス / オーエスキー病ウイルス / ボルナ病ウイルス / 神経病原性 / 遺伝子発現調節因子 |
研究概要 |
1.オーエスキー病ウイルスの前初期蛋白であるIE180は、ウイルスの転写活性化因子で、ウイルス増殖にとって必須な因子である。本研究では、マウス個体に対するIE180の作用と神経病原性発現における役割についてトランスジェニックマウスを用いて解析するため、Tet-Off systemを利用して、オーエスキー病ウイルスIE180発現トランスジェニックマウスを5系統確立した。このうちの3系統のトランスジェニックマウスにおいて、起立不能、歩様異常、後肢麻痺などの神経症状が現れることが明らかになった。神経症状を呈したトランスジェニックマウスは、対照のマウスに比べ有意な運動協調性の低下が認められた。また、対照マウスに比べ小脳の大きさが明らかに小さく、顆粒細胞およびプルキンエ細胞が散在し、小脳の層構造が破壊されていた。規則的に配列した一層で構成されるべきプルキンエ細胞の配列は不規則で、樹状突起の2次、3次突起の形成が極めて粗であった。また、プルキンエ細胞層から表層に伸びるGFAP陽性線維も認められなかった。これらのことから、小脳内でのIE180の発現が小脳形成不全を引き起こすことが示唆された。 2.ボルナ病ウイルスのp24およびp40遺伝子発現のマウス個体に及ぼす作用の解析とボルナ病発症におけるp24およびp40遺伝子の役割について解明するため、トランスジェニックマウスを確立した。ボルナ病ウイルスの転写・複製のコファクターと考えられているp24蛋白質発現トランスジェニックマウスにおいては、神経栄養因子であるBDNFの発現やシナプスの形成が減少することが認められた。さらに、攻撃性の増強や学習機能の低下などの行動学的な異常も明らかになった。これらのことから、脳内でのp24蛋白質の発現およびその蓄積が神経病原性の要因の一つであることが示唆された。
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