1.オーエスキー病ウイルスの転写活性化因子であるIE180のマウス個体に対する作用と神経病原性発現における役割について解析するため、Tet-Off systemを利用して、仮性狂犬病ウイルスIE180発現トランスジェニックマウスを5系統確立した。このうちの3系統のトランスジェニックマウスにおいて、起立不能、歩様異常、後肢麻痺などの神経症状が現れることが明らかになった。神経症状を呈したトランスジェニックマウスは、対照のマウスに比べ有意な運動協調性の低下が認められた。また、対照マウスに比べ小脳の大きさが明らかに小さく、顆粒細胞およびプルキンエ細胞が散在し、小脳の層構造が破壊されていた。これらのことから、小脳内でのIE180の発現が小脳形成不全を引き起こすことが示唆された。 2.オーエスキー病ウイルスEP0遺伝子導入マウスを作製した。EP0遺伝子の発現は、トランスジェニックマウスの全身の組織で確認され、EP0 ORFの上流213bpの塩基配列は、in vitroでの結果と同様in vivo においてもEP0遺伝子を発現できることが示された。 3.ボルナ病ウイルスのp24およびp40遺伝子発現のマウス個体に及ぼす作用の解析とボルナ病発症におけるp24およびp40遺伝子の役割について解明するため、トランスジェニックマウスを確立した。このうちのボルナ病ウイルスの転写・複製のコファクターと考えられているp24蛋白質をグリア系細胞で発現するトランスジェニックマウスにおいては、神経栄養因子であるBDNFの発現やシナプスの形成が減少することが認められた。さらに、攻撃性の増強や学習機能の低下などの行動学的な異常も明らかになってきている。これらのことから、脳内でのp24蛋白質の発現およびその蓄積が神経病原性の要因の一つであることが示唆された。
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