従来、非特異的生体防御では、異物のオプソニン化、好中球による貪食、貪食に伴う活性酸素産生の活性化が特に重要と考えられ、活性化因子やその機能が広く研究されてきた。これに対し、報告者らは、非特異的生体防御系の活性化系を抑制する系の存在を想定し、それに関わる生体分子の検索、分離、同定および生理活性の解析を行った。その概要は以下の通りである。 1.N-アセチル-D-グルコサミンに高い親和性を持つタンパク質を分離し、CBPb01と名付けた。 2.精製と同定:精製したCBPb01の一次構造を解析し、その相同性から、CBPb01をウシIgMと同定した。 3.構成糖の分析:構成糖の種類をレクチンとの反応性により分析した結果、CBPb01はマンノース、N-アセチル-D-グルコサミンおよびフコースが検出された。 4.好中球の活性酸素産生阻害:オプソニン化ザイモサンをCBPb01で処理すると、約40%の活性酸素酸性の低下が見られた。この阻害は、N-アセチルグルコサミンの添加により解除された。 以上の結果から、CBPb01はレクチンではなく、N-アセチルグルコサミンを認識し、好中球の活性酸素産生を抑制するするIgMであることが判明した。 5.活性酸素産生阻害機構:CBPb01は好中球に結合するが、結合による活性酸素産生は見られなかった。このことから、CBPb01が活性酸素産生系のホスホリパーゼC以下の過程には関与していないと考えられる。 6.活性酸素産生を抑制するウシIgMの報告は、これが初めてである。
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