研究課題/領域番号 |
11660293
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
谷口 和之 岩手大学, 農学部, 教授 (70148089)
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研究分担者 |
加納 聖 岩手大学, 農学部, 助手 (40312516)
津田 修治 岩手大学, 農学部, 助教授 (60281953)
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キーワード | 嗅覚系 / 嗅上皮 / 鋤鼻器 / 中憩室上皮 / 主嗅球 / 副嗅球 / 嗅糸球 / 糖鎖 |
研究概要 |
本年度は嗅覚受容器とその一次中枢における糖鎖の発現パターンを主にレクチン組織化学の手法によって解析し、次年度にバイオイメージングによる研究を展開するための基礎データを蓄積した。まずアフリカツメガエルでは、その鼻腔が背側から主憩室、中憩室、下憩室の3憩室に分かれ、主憩室には嗅上皮、下憩室には鋤鼻器が存在し、また一般のカエルでは呼吸上皮に被われる中憩室には、第三のタイプの嗅覚受容器(中憩室上皮)が存在することを明らかにした。これら3種類の嗅覚受容器における糖鎖の発現を調べると、それぞれの受容器における糖鎖の発現パターンは全て異なり、また付属腺の有無、微細形態の相異などから、中憩室の上皮は水中における匂い物質を知覚するための嗅覚受容器であることが強く示唆された。さらに、それぞれの投射路を検索すると、主憩室の嗅上皮は主嗅球背側部、中憩室の中憩室上皮は主嗅球腹側部、下憩室の鋤鼻器は副嗅球に投射しており、また主嗅球背側部、主嗅球腹側部、副嗅球ではそれぞれ糖鎖の発現パターンが異なっていた。従って、アフリカツメガエルの嗅覚投射路は嗅上皮ー主嗅球背側部、中憩室上皮ー主嗅球腹側部、鋤鼻器ー副嗅球という3系統の投射路から構成されていることが明らかになった。次に、ハムスターの主嗅球において、嗅覚の機能的単位であると考えられている嗅糸球における糖鎖の発現パターンを解析した。その結果、主嗅球の嗅糸球に対しては13種類のレクチンがそれぞれの嗅糸球において異なった染色性を示した。ハムスターの嗅糸球の総数は約2000個と推定されるため、13種類のレクチンがそれぞれの嗅糸球で異なった染色性を示すということは、確率的に見て、全ての嗅糸球はその反応するレクチンの種類と染色強度の組み合わせが異なることを意味する。このことは、個々の嗅糸球が発現している糖鎖の種類と量は各嗅糸球ごとに異なり、嗅覚情報の受容に糖鎖が重要な役割を演じていることを強く示唆している。
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