Mycobacterium avium(M.avium)やM.intracellulareに感染したマウスは自然抵抗性関連マクロファージタンパク遺伝子(NRAMP-1)の型によりその運命が決定される。我々のマウス実験モデルにおける感受性差はNRAMP-1遺伝子上のわずか1塩基の違いに基づいている。両抗酸菌種を用いたin vitro感染実験の結果、異なるNRAMP-1遺伝形質をもつマクロファージ内における菌増殖率は異なり、感受性(NRAMP-1^<s/s>)マウス由来マクロファージは抵抗性(NRAMP-1^<r/r>)由来のマクロファージよりも菌の増殖を許してしまうことが分かった。NRAMP-1遺伝子型の差はマクロファージ内の菌増殖性のみならずマクロファージが産生するサイトカインにも種々の影響を及ぼすことも分かった。M.avium感染マウスにおけるサイトカインプロファイルを比較してみると、感染初期におけるTh1ならびにTh2型ヘルパーT細胞の誘導と分化に関るインターロイキン10(IL-10)とIL-12のマクロファージからの産生量がNRAMP-1^<s/s>とNRAMP-1^<r/r>との間でかなり異なっていた。次に我々はM.intracellulare感染におけるNK細胞の働きとNRAMP-1遺伝子との関係をしらべた。NRAMP-1^<s/s>とNRAMP-1^<r/r>両感染マウスにおいてNK細胞(NK1.1陽性細胞)の全脾細胞に占める割合は感染のごく早期(〜48時間)に有意に増加することが分かった。さらにin vitroにおいて正常マウス脾細胞を生菌で刺激すると短時間でNK1.1陽性細胞が誘導されること、同時に培養上清中には大量のIFN-γ産生が放出されることが分かった。細胞消去試験の結果はNK細胞がIFN-γ産生に関与していることを示唆していたが、NRAMP-1^<s/s>マウスとNRAMP-1^<r/r>マウスとの間で同細胞の割合の変化ならびに培養脾細胞からのIFN-γ産生性には有意差がみられなかった。以上の結果から、抗酸菌感染症においてNK細胞はNRAMP-1遺伝子型を問わずIFN-γを介した免疫応答に深くかかわっていると考えられた。
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