研究概要 |
今年度の検討点及びその結果は以下に示した通りである。 (1)生後50日までの消化管平滑筋薬物反応牲の変化 生後3、5、7、10、15、20、30、50日齢のニワトリから腺胃縦走筋及び回腸を摘出し、acetylcholine,5-hydroxytryptamine(5-HT),motilin反応性の変化を検討した。腺胃縦走筋のacetylcholine,5-HT反応性(EC50及び最大収縮高)は3-50日齢の間で変化しなかったが、motilin反応性(特に最大収縮高)は日齢とともに減少した。一方、回腸ではacetylcholine,motilinの反応性は、日齢によっても殆ど変化しなかった。また、5-HTはいずれの日齢においても回腸に著明な機械的反応を誘起しなかった。(2)腺胃縦走筋経壁電気刺激誘発性反応の変化 0.1-20Hzの刺激を10秒間5分間隔で与えると刺激頻度依存性の収縮(atropine感受性、choline性成分)が誘起された。頻度-収縮関係に日齢(生後3-50日)による大きな変化がなかったことから、choline作動性神経支配は、ふ化時点で既に完成しているものと推察した。Atropine下では、2Hzより弛緩と刺激停止後のoff-contractionが誘起された。Atropine,guanethidine存在下で5-HTでtonusを上げ刺激を行うといずれの日齢でも2Hz刺激から弛緩作用が誘起され、この弛緩は10-20Hzで最大に達した。NO合成酵素阻害薬の処置は、弛緩反応を減弱させたが(低頻度で著明)、その抑制の度合は日齢により増加する傾向にあった。NO合成阻害薬処置で残る弛緩成分の性質については現在検討中である。今回の検討より、腺胃にはcholine作動性神経、NO神経、非choline性興奮神経(rebound収縮に関与)、非adrenaline,非choline,非NO性抑制神経の4種類が存在しており、弛緩反応に関与する神経の種類は日齢により変化する可能性が示唆された。(3)消化管におけるmotilinの分布 作製したchicken motilin抗体は、chicken motilinを強く認識していた。これを用いて組織化学的検討を行ったところ、成鳥では幽門部、十二指腸、空腸、回腸の粘膜上皮に陽性細胞の存在が認められた。特に幽門部での存在が著明であった。生後0-20日までの幼雛では、motilinは幽門部のみで認められた。陽性細胞の存在部位は、0-1日目では粘膜固有層、それ以降では粘膜上皮であった。今後、生後50-100日及びふ化前の消化管に置いても分布を検討することが必要と考える。
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