研究概要 |
今年度の検討点及び結果は以下に示したとおりである。 (1)NO神経の存在とその役割の解明:生後50日までのニワトリ摘出腺胃縦走筋標本にatropine,guanethidine下で経壁電気刺激を加えると頻度依存性(1-10Hz)の弛緩が誘起されこの反応は、nitric oxide(NO)合成酵素阻害薬のL-nitroarginine methylesterにより抑制された。またNADPH-diaphorase活性を指標にした組織化学的検討からもNO神経の存在が確認された。このNO神経から放出されるNOは、平滑筋を直接弛緩させるのみならず、電気刺激により誘発されるcholine作動性収縮、chicken-motilin,DMPP収縮のcholine作動性成分を抑制することにより神経-効果器伝達を修飾することが明らかになった。Acetylcholine放出実験よりNOによる伝達抑制の機序がシナプス前部からの伝達物質放出抑制であることを示した。この成績は、motilinとNOの間にinteractionがあることをin vitroで初めて示したものである。しかし、このようなinteractionは小腸(十二指腸、空腸、回腸)では認められなかった。(2)日齢によるmotilin誘発収縮の機序の変化:生後3-50日の間で回腸のmotilin,acetylcholine反応性(EC50,最大収縮高)及びその機序(平滑筋直接作用)は変化しなかった。一方、腺胃ではEC50は変化しなかったが、最大反応は日齢により滅少した。この現象はmotilin収縮の神経性成分(atropine,tetrodotoxin感受性成分)が減少することに起因していた。(3)胃腸管におけるmotilin分布のgradient:成鳥の胃腸管における分布について再検討を行なった。Motilin陽性細胞は、粘膜上皮または腸の陰窩に内分泌細胞様の細胞として存在していた。細胞密度にはgradientがあり、幽門部>12指腸≧空腸=回腸の順であった。他の消化管部位では存在は認められなかった。今後は、ふ化前の胃腸管において分布を検討したいと考えている。
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