研究概要 |
Salmonella Enteritidis;SEに対する抗血清RY542(抗対数増殖期菌)とRY422(抗静止期菌)を用いた検討から、分化させたヒト腸管上皮細胞Caco-2細胞に対するSE#40株の接着阻止には、SDS-PAGEによる泳動で52kDaの位置に見られ、抗血清RY542が認識するSEP52タンパク(昨年はP86タンパクと表記)が関係しており、そのN末のアミノ酸の配列から、このタンパクがfliCであることを示した。フラジェリンを固定したアフィニティカラムを用いてRY542から得られた抗fliC精製抗体は、SEのCaco-2細胞への接着を阻止し、fliCがSEの細胞への接着に関わるタンパクであることを確認した。一方、RY542を用いたウェスタンブロッティングで検出されるSEP52は、抗血清RY422では認識されず、この事実とRY422に見られるSEのCaco-2細胞に対する強い接着阻止は、細胞への接着に関わる別のタンパクの存在を示唆した。RY422で認識される主なタンパクは6種類である。Caco-2細胞の表層タンパクをビオチンでラベルすると、SEから抽出したタンパクのSDS-PAGEによる泳動で63kDaと23kDaの位置に見られる2つの分子を強く認識していることが示された。ヒト腸管上皮細胞T-84に対し、RY422は対数増殖期のSEの4℃での接着を強く阻害したが、静止期のSEの接着は余り阻害しなかった。しかし、37℃での細胞内への取り込みは、増殖期にかかわらず強く阻害したことから、加温によって速やかにこの抗体と反応する抗原がSEに出現することが示唆された。この抗体が認識するそれぞれ増殖期におけるSEの抗原をSDS-PAGE/Western blottingで解析した結果、いずれも68,38,24,14kDaの抗原を検出したが静止期の方が発現が強く、対数増殖期で急激に発現される抗原は32kDa以外に見い出すことができなかったことから、今後、菌体表面での抗原の分布の変化の可能性をあわせて検討する必要があることが示唆された。
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