研究概要 |
昨年度は以下の結果を得た、すなわち:タバコ煙吸入後に、DNA損傷が喫煙の発癌標的臓器である肺・胃・肝に認められた。非標的臓器である腎・脳・骨髄のDNAは損傷を受けなかった。ビタミンCないしはEをタバコ煙吸入前に経口投与すると、これらのDNA損傷誘発が阻止された、従って、このSCG法は標的臓器のDNA損傷を検出し、Free radicalがこのDNA損傷の原因であると思われた(Toxicol.Sci.54,104-109,2000)。 この結果を受けて、今年度は喫煙によるDNA損傷の原因としてのFree radicalの関与を直接的に証明するために、8-OHdGの検出を試みた。喫煙後、臓器をホモジナイズし、DNAを抽出し、HPLCに接続したECDにより8-OHdGを検出した。しかしながら、喫煙によるの8-OHdGの増加は認められなかった。そこでFree radicalと8-OHdGの関係を究明した。ラットおよびマウスにKBrO_3を投与し、肝臓および腎臓を摘出し、8-OH-dGを測定した。また、マウスにパラコートを投与し同様に検討した。KBrO_3投与後ラット、マウスの腎臓に8-OH-dGの増加が認められた。しかし、パラコート投与した群では、傷害部位である肺において8-OH-dGの増加が認められなかった。従って種々の酸化的DNA損傷と8-OH-dGの関係、および活性酸素による細胞障害部位の検討については、今後の重要な研究対象となると思われた。さらに、このSCG法を用いて食品添加物によるDNA損傷を検討した。現在日本で用いられているアゾ系色素(赤色2、40、102号)はいずれも極めて低い用量(10mg/kg)でマウスの結腸特異的DNA損傷を誘発することが明らかになり発癌との関係においてさらに研究が必要となることが示された(Toxicol Sci.61.2001 in press)。
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