研究概要 |
ブタコロナウイルス、血球凝集性脳脊髄炎ウイルス(HEV)の末梢神経、中枢神経系での感染機序解明に関して下記の成績を得た。 1.1〜8週齢のSPFラットへの各種経路からのHEV接種では、週齢の増加に伴い腹腔内、静脈内接種では感染しにくくなるが、皮下接種では感染が成立することから、ウイルスは血液を介してよりは末梢神経を介して中枢へ感染を拡げることが明らかとなった(J.Comp Pathol,に投稿中)。 2.1)の成績にもとずいて、ラットの末梢からのHEV接種では、ウイルスは接種側の座骨神経を介して腰髄神経細胞、腰髄神経節に感染し、さらに上行し大脳皮質、海馬神経細胞、中脳神経細胞で増殖したのち、小脳のプルキニエ細胞などの大型神経細胞にウイルス抗原が検出されたが、髄膜、上衣細胞、脈絡そうなどには抗原が検出されず、血液、脾臓、肝臓からはウイルスも検出されなかった。これらの所見から、ウイルスは座骨神経を上行して脊髄に感染し、神経節を通過して特定の神経細胞に感染を拡げることが強く示唆された。ハムスター、スナネズミの末梢皮下へのHEV接種では、ラットでの成績と同様に、脊髄神経細胞で増殖した後に大脳皮質神経細胞、海馬神経細胞、プルキニエ細胞等の大型神経細胞にウイルス抗原が検出され、これらの細胞での増殖が明らかとなり、本ウイルスがこれらの小型実験動物でも末梢神経と中枢神経系との解剖学的、生埋学的結びつきを解明する生物学的なトレイサーとして有用であることが示唆された。これらの成績は昨年6月スペインで開催された第12回国際実験動物学会(ICLAS)と第7回ヨーロッパ実験動物学会(FEIASA)の合同会議およびで8月にシドニー開催された第11回国際ウイルス会議で発表した。 本年1月ICLAS,..FELASA委員会よりスペインでの我々の発表がHigh International Standardとして評価され、論文の提出を要請された。 現在、鼻腔感染および視覚領域でのウイルス感染と新しいウイルス濃縮法によるウイルス精製について実験中である。
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