わが国における代表的な食中毒菌のひとつとして知られるYersinia enterocolicaのうち、最も人に対する病原性が強いY.enterocolitica血清型O:8による感染患者は、近年北日本を中心として拡大の様相にある。本研究ではYersinia enterocolitica血清型O:8のノネズミから人、またはノネズミからノネズミへの感染経路として、経口感染のほかにノミやダニなどの外部寄生虫が媒介者になっている可能性を探る目的で、1999年4月〜12月の9ケ月間に、昨年の調査でノネズミから本菌が分離された山形県を中心に、福島および栃木の3県の山林で捕獲したノネズミ(アカネズミ25頭、ヒメネズミ17頭、ハタネズミ5頭)計47頭とこれらノネズミから採取したダニ類115匹から、本菌の分離を試みた。その結果、ノネズミ20頭(42.5%)とダニ類5匹(4.3%)から非病原性Yersiniaが分離されたが、Y.enterocolitica血清型O:8は今回の調査では分離されなかった。また、実験動物のマウスを使い、本菌を経口的に感染させたマウスにダニを寄生させて吸血後、そのダニを他のマウスに寄生させることで本菌の感染が成立するかを実験的に検討したが、今回の研究では感染を成立させることはできなかった。これらのことから、来年度はダニだけでなく、ノミを用いて同様な実験を行い、外部寄生虫による本菌の媒介の可能性について、さらに詳細に検討する予定である。
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