研究概要 |
本研究はパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)、リボタイピング、ランダムプライムドPCR法(RAPD)が食中毒原性黄色ブドウ球菌の生態・疫学研究に応用できるかについて検討したものである。 1.1980-1995年の16年間に、東京都内の35地域で発生したブドウ球菌食中毒129事例から分離したコアグラーゼVII型菌129株について、前記の3つの遺伝子型別法を用いて解析を行った。PFGEでは、129株は4群(A-D)に分けられ、A群が65株、B群が50株、C群が10株、D群が4株で、AとB群が全体の89%を占めていた。A、B、D群はさらにサブパターン(A群は23型、B群は10型、D群は4型)に分けられた。 2.AとB群に属する菌株では共通するフラグメントが多数みられ、VII型菌は遺伝学的にも近縁な菌株から構成されていることが示唆された。 3.同一パターンの菌(例えばサブパターンA1,A3,A7,B1,B3)が長期間にわたって、食中毒事例から繰り返し検出され、疫学的にも興味深い所見であった。 4.PFGEによって分類された各サブパターンの代表株38株のリボタイピングとRAPD解析では、前者では6リボタイプに分けられ、H1が30株、H2が1株、H3が2株、H4が1株、H5が2株、H6が2株であった。PFGEパターンAとB群の大多数がリボタイプH1に、C群はH4に、D群はH5或いはH6に型別され、後者では3RAPDパターンに分けられ、パターン1が32株、パターン2が2株、パターン3が4株であった。PFGEパターンAとB群の大多数がパターン1に、C群はパターン2に、D群はパターン3に型別され、PFGEはリボタイプ或いはRAPDパターンをさらに細分化できることが示唆された。
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