平成11年度に引き続いて、ヒト・動物・食肉における食中毒原性黄色ブドウ球菌の分布状況と分離株の性状について検討した。 1.黄色ブドウ球菌は馬を除く、ヒト・豚・牛・鶏・犬・猫の皮膚から検出されたが、その検出率は1.2〜42%の範囲で、また食肉では鶏肉80%、豚肉20%で、特に鶏肉が高率に汚染されていることがわかった。ブドウ球菌食中毒の原因となるエンテロトキシンを産生する株は87株中26株(30%)で、そのエンテロトキシン型はB型11株、A型9株、C型5株、B+D型1株であった。わが国で発生している食中毒の主要な毒素型であるAとB型が多く検出されていたことは、疫学的に興味ある所見であった。 2.PFGEタイピングではコアグラーゼ型をさらに細かく分けることができることから、両者を組合せることにより、より詳細な生態学的情報が得られることが示唆された。 3.前述のヒト・動物・食肉における黄色ブドウ球菌の汚染調査で、食肉からの検出率が高かったことから、1スーパーマーケットで市販されていた鶏肉と豚肉の黄色ブドウ球菌汚染状況を半年佃にわたって追跡調査し、また分離菌株についてPFGEを用いて疫学解析を行った。菌検出率は鶏肉70%(70/100検体)、豚肉36%(29/80検体)で、本研究でも鶏肉が高率に汚染されていることが再確認された。鶏肉70株は15PFGEパターン、豚肉29株は3PFGEパターンに分けられ、特に鶏肉は多様な遺伝子型菌で汚染されていた。また興味深い所見は同一店舗内で販売されていた鶏肉と豚肉がともに同じ遺伝子型の菌によって汚染されていたこと、同一遺伝子型の菌が調査期間中、鶏肉と豚肉から繰り返し検出されたことである。
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