本研究は、イヌの中枢性嘔吐のα_2-アドレナリン作動性機序の発現に中枢のセロトニンが伝達物質としての役割を担うことを解明し、α_2-受容体とセロトニンに密接な関係があることを証明したのを発端に遂行された。本研究では、イヌ血小板におけるα_2-受容体のサブタイプはα_<2A>アドレナリン受容体であることを証明し、本受容体がアドレナリン、ノルアドレナリンの血小板凝集促進効果に関与することを明らかにした。この血小板α_2-受容体活性と脳のα_2-受容体活性の相関性を交感神経副腎系の活性化を示す病態において検討したところ、血小板と脳のα_2-受容体数の変化に正の相関性が認められ、α_2-受容体作動薬投与後のイヌの行動、循環器系への反応性を減弱したことから、中枢もしくは末梢のシナップスモデルとしての血小板の有用性が示唆された。一方、本研究は、α_2-受容体作動薬の中には血小板凝集促進効果を持たない薬物があり、その多くはイミダゾリン誘導体であることを発見し、イヌ血小板には新たにI_1とI_2の少なくとも2つの受容体サブタイプが存在することを証明した。I_1-受容体はGTP結合蛋白と共役している受容体であり、I_2-受容体はGTP結合蛋白と共役しない受容体であることが示唆された。このことは、イヌ血小板における本受容体が他の動物や組織で認められているI-受容体と同様のものであると考えられた。また、I_1-受容体とI_2-受容体は異なった構造や情報伝達経路を有することが示唆された。しかし、I-受容体の血小板における機能と役割、およびセロトニン受容体の解析については充分に検討し得なかった。この点については今後に残された重要課題である。このI-受容体は血小板およびその他の組織において様々な役割を果たしていることが考えられ、今後、I-受容体の機能の解明についての一層の研究が必要である。
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