1.黒毛和種雌成牛の性周期に伴う卵巣・子宮の血流動態:昨年に引き続き、正常性周期を示す黒毛和種雌牛2頭の性周期中の卵巣および子宮の血流動態、特に子宮動脈の抵抗係数(Resistive index(RI)についての変化を超音波ドプラ法を用いて検討した。その結果、RIは発情周期に伴い周期的に変化し、排卵前に低値を、黄体期に高値を示す傾向がみられた。すなわち、RIは排卵2〜4日前より減少し、排卵直前まで最低値を示した。その後、増加し排卵後1〜3日で排卵前5日の値に復帰した。この変動様式には個体間で多少差が認められたが、これは妊娠・分娩回数に比例して進行する子宮動脈の妊娠性硬変(血管抵抗性の増大)に起因するものと考えられた。また、子宮内の血流像の変化を便宜上、スコア化してその推移を検討した結果、従来観血的に測定された発情周期に伴う子宮動脈の血流量の推移と同様の傾向を示した。さらに、卵巣の血流を黄体の血流像を指標として、その推移を観察した結果、観血的な卵巣動脈の血流量の推移と類似した。以上より、今回行った非観血的超音波ドプラ法による黒毛和種雌成牛の卵巣・子宮の血流動態解析は、従来の観血的手法に替わる有用な手段となり得ることが明らかとなった。 2.超音波造影剤による卵巣・子宮血流信号の増強効果:頚静脈経由の超音波造影法を造影剤(レボビスト)の注入量を変え検討した結果、いずれの量でも注入後の血流増強効果は乏しかった。すなわち、牛では造影剤の希釈が著しく大きいため末梢動脈への移行が不十分と考えられた。なお、実験的に行った腹腔動脈内注入では子宮動脈や子宮内血流の著しい信号増強効果が認められた。超音波造影剤の至適注入法についてはさらに検討が必要と思われる。
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