研究概要 |
本研究では発がんプロモーション時期に特異的な発現遺伝子の同定を目的として、ラット肝二段階発癌モデルを利用して、phenobarbital(PB)投与によるプロモーション初期(10日目)に発現上昇する遺伝子群をsubtractive PCR法にてクローニングし、計67の単独遺伝子を単離した。次いで、実際に形成された肝がん組織を含む各種プロモーション過程で恒常的に発現上昇する遺伝子をNorthern blotスクリーニングにより選別し、12遺伝子を得た。 その内、2つの未知遺伝子の他、発がんとの関与が示唆されている数種の遺伝子が得られたが、特に強い発現を示したapolipoprotein A4 (APOA4),nuclear receptor binding factor-2,CD81,GST-μ2,hypothetical protein,未知クローン#2は短期発がん性指標として有用であると考えられた。これらの遺伝子は、その構成的な発現から、正常肝臓での機能遺伝子であることが推定され、イニシエーションによってその発現の抑制を受けたものがプロモーション過程で回復することを特徴としていた。また、各種の非遺伝子傷害性肝発がん物質の28日間単独投与には特異的に反応しないことから、プロモーション過程に特異的な発現であることが示された。次にこれらの遺伝子について、いくつかの非遺伝子傷害性性発がん物質による発がんプロモーション時期でのin situ hybridizationによる局在検索を行った結果、APOA4 mRNAが、発がんプロモーション作用の強いthioacetamide投与により、前がん病変と考えられるGST-P陽性巣に一致した局在を示した。この局在性は用いた発がん物質のプロモーション強度に依存しており、APOA4がGST-P陽性巣の形成過程に関与している可能性が示唆された。
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