セルロースジアセテート(CDA)は生分解性であることが数年前に確認されたが、CDAはプラスチックというには熱流動性が不足している。そこで本研究は、CDAのプラスチック化についての新規な手法の開発を目的とした。その方法として、グラフト重合による内部可塑化法をとりあげ、生分解性を維持、増進させると共に、その方法の欠点であるグラフト効率の低さの改善、及び反応速度の増大に特に留意した。具体的には、環状エステルおよび/またはオキシ酸のグラフト重合を検討した。前者として、環状エステルの開環重合によるCDAへのグラフト重合をとりあげ、2-エチルヘキサン酸スズ(II)を触媒に用いることで上記の条件が全て満足されることを見出した。この反応は二軸エクストルーダーを用いるリアクティブプロセシングでも十分行いうるものであり、その結果、液比(エステル化剤/CDA仕込み比)が0.4など低いところまでの反応が可能となった。 結果として、広範囲のモル置換度(MS)の生成物が得られ、それらの熱的及び機械的特性など諸特性の体系化を行い得た。すなわち、カプロラクトン(CLN)のCDAへのグラフト重合体(g-CDA)についてみると、モル置換度(MS)が1以下、または8程度までの領域では、g-CDAは明確な結晶構造を持たないが、MSが8以上の大きな領域ではポリカプロラクトン(PCL)グラフト側鎖の結晶化が起こっていることが知られた。g-CDAからの熱圧成形シートの引張特性及びシートの不透明化・濁度の現れ方も、それらの現象を裏付けるものであった。このグラフト側鎖の結晶化は、CLNとラクチドなど共重合グラフトを条件を選んで行うと認められなくなるが、この点は報文として本研究期間中に学術誌に発表した。オキシ酸類のCDAへのグラフトに関しても同様に体系的に検討し、報文にまとめて国際誌に投稿した。
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