研究概要 |
矮性エンドウ(品種Progress)は,暗黒中では他の蔓性のエンドウ(品種Alaska)とほぼ同様に生長するが,光が照射されると著しい生長抑制が起こり始めて矮性形質が発現する.本研究の目的は,この矮性エンドウに於いて,光照射により発現が特異的に誘導される遺伝子を探索後,これらの遺伝子の構造・機能を明らかにし,この矮性エンドウの矮性発現の仕組みを遺伝子レベルで解明することである.現在までに,ディファレンシャル・ディスプレイ法を用いて光照射により特異的に発現する(あるいは発現が抑制される)と考えられる矮性エンドウの遺伝子(cDNA)20個を見い出している. 本年度は,これらのすべての遺伝子についてRT-PCRを行い,この矮性エンドウの光により矮性発現に特に重要だと考えられる1種類の遺伝子を選別した.次に,この遺伝子をプラスミドベクターに挿入し,このプラスミドを大腸菌に形質転換した.この大腸菌をプレートにまき,培養後,コロニーPCRと電気泳動で目的の遺伝子を持った大腸菌コロニーを選抜した.さらに,この大腸菌を増殖させた後,大腸菌よりプラスミドを回収し,電気泳動で精製し,シークエンス反応を行った.これにより,この遺伝子の塩基配列を決定後,データベースによる検索を行った.その結果,この遺伝子は,植物ホルモン,ジベレリンの合成代謝経路で特に重要な役割を持つ酵素3β-ヒドロキシラーゼのcDNAであることが分かった.この酵素は,ジベレリン20(非活性型)からジベレリン1(活性型)に転換する酵素である.次年度以降で,この3β-ヒドロキシラーゼ遺伝子の発現特性を明らかにしたい.また,光照射により特異的に発現誘導されるこれ以外の遺伝子の構造・機能も明らかにして行きたいと考えている.
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