1.レッドリスト種の個体群動態調査 タガメを中心とした水生昆虫個体群の動態について、主に兵庫・岡山両県の県境地域で標識再捕獲法によるフィールド調査を行った。タガメを含む水生昆虫は、水田への依存度が種によって微妙にずれていた。種によっては水田以外の止水環境、池、水路、河川の淀みなど、多様な生息場所のマルチハビタット利用の実態明らかになった。その結果は多様性の保全が一圃場のビオトープの設定では不十分なこと、多様な種が必要とする適切な環境の設定が必要であり、その具体的な構造を提示していく上で今後重要な情報である。 2.農業ビオトープの造成 現地に村人の協力で休耕田を有効活用したビオトープ3水田を造成し、そこでの生物相についても調査とクワイ、赤米・黒米数品種の栽培を試みた。造成一年目でどのように群集が形成されてくるのかを第一段階として見ようとした。実験的に灯火採集したタガメを放飼したところ、容易に産卵増殖が認められた。しかし幼虫密度が高まりすぎて、餌不足により新成虫が出現しない場合もあり、今後、餌資源をどう増殖させるかが課題である。クワイや水稲は、タガメなどの産卵場所や隠れ場所になり、食糧生産のみならず多様性維持にも関与していた。また新たに地域のレッドリスト種であるコウホネ、ヤナギスブタ、ミクリ科の一種などの水草も移植をした。田ビオトープは一般水田水落とし後も湛水条件を維持したところ、タガメの越冬個体が多数ビオトープ周辺で越冬しているのも確認され、今後の継続調査を進めたい。作物の収穫は、イノシシによる被害で皆無となった。
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