本研究における以下の2項目について、調査研究などを行い両者を関連づけて取りまとめを行い、農業ビオトープ理論に関する試論を提案した。 1.レッドデータ個体群に関するフィールドワーク タガメ、ゲンゴロウCybister属について、標職再捕獲法を駆使した詳細な個体群の時空間的動態に関する解析を行った。これらの調査から、タガメとゲンゴロウでは、生活場所の利用形態が若干異なること。メインの繁殖地は両種とも水田であることが判明した。スブタ、デンジソウなどのRDB水田雑草は、水田や水路に数少なく残され、これまで言われてきたような湿田やため池が主なハビタットではなく、条件がそろえば乾田でも棲息できることが新たに判明した。 2.増殖要因解析実験 不耕起、緑肥マルチングによる低投入持続型栽培法、現地では赤米・紫黒米などの水稲品種とクワイの混作実験を行い、そこでのレッドリスト種の増殖の可能性を検討した。その結果、低投入栽培法では多くの水生昆虫の定着、増殖が促進され、水稲の収量も十分得られ、農業ビオトープの原型になりうることが明らかとなった。 3.総括 以上からレッドリスト種の保全のためには、個体群維持のための供給源が重要なこと、健全な水稲栽培が行われ持続されることが重要であり、休耕田を利用した多様作付技術は農業ビオトープとして一つの可能性を示すものと結論づけられた。
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