真核生物においてタンパク質の分泌は小胞体に始まる分泌経路を通って行われ、この経路を形成する細胞内小器官は脂質2重膜を基本構造としている。また、この分泌系の細胞内小器官はタンパク質の輸送機能のみならず、脂質の合成や脂質構造の変換の機能も持つことから、タンパク質輸送と脂質の合成、変換は深くクロストークしていることが推察されている。しかしながら、現在のところ、その実体の全体像は明かとなっていない。 そこで本研究では、研究代表者が以前より行ってきた試験管内での精製脂質と精製タンパク質を用いた酵母の分泌系での輸送装置の形成の解析、植物細胞での分泌系および液胞へのタンパク質の輸送機構の解析と、分担者が行ってきた過酸化脂質および脂質由来のセカンドメッセンジャーの作様機作の解析を有機的に結び付けることにより、脂質の合成や脂質構造の変換と分泌系の機能の関連の理解を深めることを目標に研究を遂行し、現在までに以下の成果を得た。 1.タンパク質輸送装置である輸送小胞の形成の際の低分子量GTP結合タンパク質の膜への結合量は、脂質膜の流動性の増大に依存して増大することを見い出した。 2.植物のPI4-キナーゼまたはリン脂質合成非依存液胞輸送経路に関わる輸送シグナルの構造特異性を明らかにし、そのシグナルを認識するレセプターを同定した。
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