研究概要 |
哺乳動物細胞のM/G1遷移にサイクリンAの蛋白分解は必須でなく、また分解抵抗性サイクリンAに付随するサイクリン依存性キナーゼ(CDK)の活性はG1初期に抑制される。この蛋白分解に依存しないCDK活性抑制機構について、前年度までの解析よりCDKの抑制的リン酸化によるものではないこと、主要CDK阻害因子p21,p27は必須でないこと、p21,p27 2重欠損細胞において癌抑制因子p107がG1初期にサイクリンAと結合すること、p107がp21,p27と拮抗的にサイクリンAに結合しCDK阻害因子として機能していることが示唆された。そこで、今年度はそれらの検証として以下の解析を行った。 (1)p21,p27,p107 3重欠損マウスの作製:H12年度より試行しながら難航していたが、最近ようやく3重欠損マウスの作出に成功した。この変異型マウスについて少なくとも胎仔の発生段階には異常は認められていない。現在1系統のみ繊維芽細胞を分離し初代培養を行うと同時に、蛋白分解抵抗性サイクリンAをレトロウイルスベクターにより導入し、安定発現細胞株の樹立を試みている。 (2)抑制的リン酸化抵抗性CDK2変異体の効果:既にin vivoリン酸化アミノ酸解析により、M/G1遷移期にCDKのチロシン残基における抑制的リン酸化は検出されないことが示されたが、そのチロシン残基がフェニルアラニンに置換された変異型CDK2(CDK2AF)を分解抵抗性サイクリンAとともに発現させ、M/G1遷移に伴うサイクリンA-CDK活性を調べたところ、野生型CDK2を発現させた場合とほぼ同様にその活性はG1初期に抑制された。即ちG1初期におけるCDK活性抑制が抑制的リン酸化によるものでないことが改めて強く示唆された。
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