本年度は、IE180mRNAに対して設計したボザイム遺伝子をブタを培養細胞内に導入し、PRVの防除効果を調べた。リボザイム遺伝子の導入には、哺乳動物用発現ベクターを利用する必要があるが、一般的にこれらのベクターは、外来遺伝子導入部位の上流及び下流に、5'及び3'のUTRを持つ。リボザイムはRNAそのもので酵素機能を持っているため、翻訳効率を高めるための5'及び3'のUTRは必要なく、逆にその配列がリボザイムに付加されることによって、リボザイムの高次構造を変化させ、触媒機能の低下につながる可能性がある。そこで今回ブタ培養細胞に導入した遺伝子は、抗IE180mRNAリボザイムが、転写と同時に切断に必要な最小限の配列となるよう、このリボザイム遺伝子の上流及び下流に、このリボザイムの5'及び3'側を切断(分子内反応)する別のリボザイム遺伝子をそれぞれ挿入して、発現ベクターであるpCI-neo(Promega)にクローニングした。pCI-neoにクローニングしたリボザイム遺伝子は、リポソーム法を用いてブタ培養細胞(Fs-L3株)に導入した。pCI-neo中に含まれるG418耐性遺伝子を利用して形質転換した細胞をスクリーニングし、えられたクローンから任意の5クローンを選び、PRVを感染させた。PRV感染後、経時的に細胞を観察したところ、リボザイム遺伝子を導入していない細胞では、感染後2日でCPEが培養器全体に広がったが、リボザイム遺伝子を導入した細胞では、感染2日目ではCPEが観察されないクローンもあった。しかしながら、このPRV耐性を示したクローンも、感染5日目にはCPEが培養器全体に広がり死滅した。これらの結果から、今回導入したリボザイムはある程度のPRV防除能を持つと考えられるが、より強い防除能をえるためにH12年度にはさらに様々な改良を行う予定である。
|