研究概要 |
1.好熱性ラン藻Synechococcus vulcanusのpsbAv1,psbDv1,psbOv1遺伝子のターゲッティングベクターおよび組換えラン藻株の作成 中温性ラン藻Synechococcus sp.PCC 7942株の最も発現しているD1タンパク質遺伝子psbAIの5',3'非翻訳領域をもつプラスミドに、好熱性ラン藻のpsbAv1遺伝子ORFを組み込んだプラスミドpEXE11を作成した。pEXE11を用いて昨年度構築したストレプトマイシン感受性rps12部分2倍体を形質転換したところ、得られたストレプトマイシン耐性コロニーはすべてpsbAI遺伝子座に組込んだ野生型rps12遺伝子の遺伝子変換によるものであった。この原因としてrps12部分2倍体における自然的遺伝子変換頻度が10^<-5>〜10^<-4>であるため、外部から導入した自律複製能のないpEXE11による遺伝子置換頻度よりも自然的遺伝子変換頻度の方が上回ることが考えられた。そこで、自然的遺伝子変換を起こさないラン藻部分2倍体を作成するため、大腸菌または異種のラン藻由来のrps12遺伝子を組込んだベクターを作成した。これらを用いてPCC 7942のpsbAI遺伝子座に異種rps12遺伝子を組み込んだ部分2倍体を作成し、遺伝子置換の効率化を行っている。 さらに組換え効率を上昇させる他の方法として、ラン藻細胞内で自律複製可能なベクターpUC303の使用も行った。1例としてpsbAIΔORF遺伝子をpUC303の誘導体に組み込んだプラスミドを用いて部分2倍体を形質転換すると、約16%以上の頻度で染色体上のpsbAI遺伝子座のORFが欠失したホモジェノート株を作成することができた。 2.組換え遺伝子の発現解析 組換え体における光化学系IIタンパク質の精製を迅速に行う方法として、CP43タンパク質のC末端にヒスチジンタグを付加した組換えラン藻株を作成した。この株は光独立栄養条件下で生育可能であり、サザン分析の結果ホモジェノートであった。
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