研究概要 |
1.ポジティブ選択可能なストレプトマイシン耐性変異株の作成 ラン藻SynechococcusPCC7942株のリボソームのS12タンパク質をコードするrps12遺伝子に起こったストレプトマイシン耐性変異株を取得した。この変異株のpsbAI遺伝子座に野生型rps12遺伝子をカナマイシン耐性遺伝子と共に組込んだ部分2倍体は、ストレプトマイシン感受性を示した。この事実より耐性変異が劣性表現型を示すことが確認された。 2.psbAI遺伝子座のターゲッティング 部分2倍体に対して、エレクトロポレーション法によりpsbAI遺伝子の5'と3'両側の相同配列とクラゲの蛍光タンパク質遺伝子のコード領域をもつ鋳型プラスミドを導入し、ストレプトマイシン耐性に復帰したコロニーを解析した。これらの多くは遺伝子変換によるものであったが、低頻度(約3%)でカナマイシン耐性を消失し、psbAI遺伝子座に蛍光タンパク質遺伝子が導入された組換え体が得られた。 3.好熱性ラン藻Synechococcus vulcanusのpsbAv1遺伝子のターゲッティングベクターおよび組換えラン藻株の作成 中温性ラン藻Synechococcus sp.PCC7942株の最も発現しているD1タンパク質遺伝子psbAIの5',3'非翻訳領域をもつ自律複製能のないプラスミドに、好熱性ラン藻のpsbAν1遺伝子ORFを組み込んだプラスミドpEXE11を作成した。pEXE11を用いてストレプトマイシン感受性rps12部分2倍体を形質転換したところ、得られたストレプトマイシン耐性コロニーはすべて野生型rps12遺伝子の遺伝子変換によるものであった。この原因として自然的遺伝子変換頻度が10^<-5>〜10^<-4>であるため、pEXE11による遺伝子置換頻度を上回ることが考えられた。そこで、組換え効率を上昇させる他の方法として、ラン藻細胞内で自律複製可能なベクターpUC303にpsbAIΔORF遺伝子を組み込んだプラスミドを用いて部分2倍体を形質転換すると、約16%以上の頻度でpsbAI遺伝子座のORFが欠失したホモジェノート株を作成することができた。
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