キノン化合物などの酸化還元化合物(電子伝達メディエータ)存在下で、各種真核細胞(パン酵母または黒カビ)と電極間の電子移動を実現し、それぞれの電気化学的応答に影響を与える因子について検討を行った。 1、パン酵母固定化電極の電気化学的応答特性 測定液にメディエータのみを添加したときの電流応答(I_<med>)は、パン酵母の培養時間に依存せず、ほぼ一定な応答を示すのに対して、メディエータ存在下でさらにグルコースを添加したときの電流応答(I_<glc>)はパン酵母の対数増殖期に大きな電流応答を示し、定常期になると次第に減少した。このI_<med>とI_<glc>により、パン酵母の細胞数測定と活性測定が行えることが分かり、今後環境汚染物質の濃度と本法により得られる酵母活性の関係を検討する。 2、シアン化カリウムによるパン酵母固定化電極応答の変化 シアン化カリウムを測定液に添加することにより、電流応答が変化することが分かった。シアン濃度により電流は増加する場合と減少する場合があり、シアン濃度と電流変化について今後さらに検討すると共に、他の環境汚染物質についても検討を行う。 3、黒カビ固定化電極の電気化学的応答特性 ビタミンK_3存在下における黒カビ固定化電極の応答特性について基礎的検討を行い、特に各種糖類に対する応答が培地成分により大きく変化することを明らかにした。さらに細胞内酵素反応を検討し、ping-pong機構により見かけのミハエリス定数を求めた。 4、その他 クロレラ固定化電極を用い、光照射下における電子伝達共役について基礎的な実験条件の検討を行った。
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