細胞外基質による組織形成の制御

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11670001
• 研究機関: 秋田大学
• 研究代表者: 今井 克幸 秋田大学, 医学部, 助手 (80006741)
• 研究分担者: 妹尾 春樹 秋田大学, 医学部, 教授 (90171355)
• キーワード: 肝臓星細胞 / 肝実質細胞 / 共培養 / 組織形成 / 細胞外マトリックス / 活性持続型ビタミンC / 細胞接着 / コラーゲン

研究概要

我々は11年度に、ラットから単離した肝臓星細胞と肝実質細胞を性質の異なる細胞外マトリックス、つまり(A)ポリスチレン培養皿の上、(B)I型コラーゲンゲルの上、および(C)マトリゲルの上に播種し、組織形成を促進する活性持続型ビタミンCを培養メディウムに添加し16日間共培養し、形成された肝組織の三次元形態を走査型および透過型電子顕微鏡で解析した。その結果、I型コラーゲンゲル上の肝組織では実質細胞間に毛細胆管様の構造とtight junctionおよびdesmosomeの形成がみられ、他の基質上で培養した肝組織に比べ、生体内の肝細胞索に最もよく類似した組織を形成した。この結果は細胞外マトリックス成分が細胞間接着装置の形成を介して、組織構築過程を制御している可能性を示した。
しかし、この培養肝組織形成過程における星細胞間接着装置の形成はいまだ不明である。
そこで本年度は、星細胞間接着構造形成における細胞外マトリックスの働きを知る目的で、前述の(A)〜(C)の異なる細胞外マトリックス上に星細胞を培養し、その細胞間接着形態を透過型電子顕微鏡で詳しく観察した。その結果、星細胞はI型コラーゲンゲル上とポリスチレン上で、より多くの接着構造を形成し、マトリゲル上では少なかった。これら星細胞間に形成された接着構造は、細胞間間隙がほぼ10nm、ひとつの接着部の広がりは、超薄切片上で200nm以上あり、接着部細胞膜直下には直径10nm以下の微細線維の集積が存在した。これらの星細胞間にみられる接着装置は、その微細形態の特徴よりadherens junctionである可能性が示された。これら結果は、細胞外マトリックスが実質細胞および星細胞間の接着装置形成を介して、培養肝組織形成を制御している可能性を示した。またこの結果は、哺乳動物星細胞間における、接着装置の形成を初めて電子顕微鏡レベルで明らかにした。
現在,この接着構造に接着分子cadherinが関与しているかを解明するため、われわれは、N-cadherinとP-cadherinにたいする免疫電子顕微鏡法により解析中である。

研究成果

• [文献書誌] Imai K.: "Morphology of sites of adhesion between extracellular matrix and hepatic stellate cells."Connective Tissue. 32. 395-400 (2000)
• [文献書誌] Imai K.: "Adhesion between cells and extracellular matrix with special reference to hepatic stellate cell adhesion to three-dimensional collagen fibers."Cell Structure and Function. 25. 329-336 (2000)
• [文献書誌] Imai K.: "Storage of lipid droplets in and production of extracellular matrix by hepatic stellate cells (vitamin A-storing cells) in Long-Evans cinnamon-like colored (LEC) rats."Anatomical Record. 258. 338-348 (2000)
• [文献書誌] Imai K.: "Regulation of extracellular matrix production in the stellate cells-An analysis in the liver of LEC rats-."Cells of the Hepatic Sinusoid. 7. 185-186 (1999)
• [文献書誌] Senoo H., et al.: "Vitamin A-storing system in mammals and birds in Arctic area-Astudy in the Svalbard archipelago-."Cells of the Hepatic Sinusoid. 7. 34-35 (1999)
• [文献書誌] Sato M., et: "Intracellular signaling for process elongation in cultured hepatic stellate cells on type I collagen gel."Cells of the Hepatic Sinusoid. 7. 32-33 (1999)