研究概要 |
われわれは、平成11年度にラットから単離した肝臓星細胞と肝実質細胞を種類の異なる細胞外マトリックス上つまりポリスチレン培養皿上、I型コラーゲンゲル上、I型コラーゲンゲル内、およびマトリゲル上に組織形成を促進する長期活性持続型ビタミンC存在下で共培養し形成された肝組織の形態を走査型および透過型電子顕微鏡で解析した。その結果、I型コラーゲンゲル内に共培養し形成された肝組織で、実質細胞間に毛細胆管様構造、tight junction, adherens junction, desmosome,およびgap junctionが形成され、他のマトリックス上で共培養されたものに比較して、生体内でみられるの肝細胞索に最も良く類似した三次元培養肝組織を形成した。つまり細胞外マトリックスが、細胞間接着および培養肝組織形成を制御している可能性が示唆された。しかし、この培養肝組織形成における、星細胞間接着装置形成については不明であった。そこで平成12年度では星細胞間接着装置形成における細胞外マトリックスの働きを知る目的で、性質の異なる細胞外マトリックス上に星細胞を単独培養し、細胞間接着に着目し透過型電子顕微鏡で詳しく解析した。その結果、マトリゲル上で培養した星細胞に比較して、ポリスチレン培養皿上あるいはI型コラーゲンゲル上に培養された星細胞間には、より多数の細胞間接着が形成された。これら星細胞間の接着装置はその微細形態の特徴よりadherens junctionである可能性が示唆された。そこで平成13年度では、この細胞間接着装置の構成分子を明らかにするため、培養星細胞をI型コラーゲンゲル上に単独培養し、adherens junctionの構成要素である分子cadherinとcateninの局在を共焦点レーザー顕微鏡をもちいた免疫蛍光顕微鏡法により解析した。その結果、cadherinと、α-およびβ-cateninがこの接着に関与していることを明らかにした。これにより星細胞間の接着装置はadherens junctionであることが分子レベルで確認された。これらのデーターより、細胞外マトリックスは細胞間接着装置形成を介して組織形成を制御する可能性が示された。また本研究で哺乳類の星細胞間に接着装置が形成されることがはじめて微細構造および分子レベルで実証された。
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