今年度は、原子間力顕微鏡(AFM)により生きた細胞(培養細胞)を液中で連続観察する際の測定条件を検討し、以下の点について明らかにした。 1)培養細胞の選択:AFMで観察する細胞は、ディッシュにしっかりと貼り付き、扁平に広がっている細胞が適している。そこで肺腺癌細胞、骨肉腫細胞、扁平上皮細胞、血管内皮細胞、神経細胞などについて位相差顕微鏡や走査電子顕微鏡でその基本構造を観察した。この中で、肺腺癌細胞、扁平上皮細胞、血管内皮細胞は扁平で、アクチン蛍光染色による解析からも、AFM観察に適した細胞であることがわかった。 2)生きた細胞のAFM観察のための測定条件の最適化:AFM観察時に細胞が安定した培養環境を維持できるように、温度コントロールと溶液潅流が可能な液中観察用チャンバーを試作した。液中でのAFM観察法については、コンタクトモードと振動モードの比較を行ったが、現時点では、バネ常数の小さい探針を用いたコンタクトモードが、振動モードに勝っていた。また、測定時は探針・試料間のカが出来るだけ小さい条件に設定することが重要で、これを怠ると細胞に機械的なダメージを与えてしまうことがわかった。 以上の実験の過程で得られたAFMの連続撮影画像をコンピューターでつなぎ合わせ動画化した。来年度生きた細胞の液中AFM観察を経時的に行い、その動画を作製し、細胞の伸長運動における細胞骨格のダイナミックスを具体的に解析したい。
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