研究概要 |
此れまでの研究によりp53及びS1蛋白質のビメンチンへのアンカーリング機能ドメインを決定した。変異型及び野生型p53の細胞骨格局在のビメンチン依存性、及びp53分子のC末63アミノ酸とN末40アミノ酸のドメインの関与を明らかにした。S1蛋白質C2のC末ドメインC47(47アミノ酸)はその核内移行に必須であった。今回、新たにp53C末ドメインの核外移行シグナルの関与を明らかにした。 本年度においては、DNA結合ドメインにおける種々の変異型p53のビメンチンアンカーリング機能と核外移行を中心に解析した。正常機能のClass I変異型(R175C)と細胞死不能のClass II変異型(R175S)p53のGFPキメラは顕著な核内局在を示した。Class III変異(V143A,R175D,R175F,R175Y,R249S)はG1期停止及び細胞死ともに不能である。Class IIIの変異型p53-GFPの多くは細胞質にアンカーされた。変異型P53(R249S)のN末とC末ドメインの欠損変異はその核内移行を促進した。 p53のC末100アミノ酸のドメインAP1のGFPキメラは、Cos7細胞やHeLa細胞においては核内に顕著に局在したが、著明な細胞死を生じなかった。従ってC末のAP1ドメインのみでは細胞死の誘導に不十分であり、p53蛋白のN末ドメインも細胞死に関与することが示唆された。核外移行シグナルの変異型p53-NES(L348,350A)のGFPキメラは核内に強く局在し、特に若い細胞において顕著な細胞死を生じさせた。即ちNESの変異によるp53の核外移行阻害は細胞死を強く誘導すると考えられる。しかし老化細胞ではp53-NESの細胞質局在が顕著で、アポトーシスは僅かであった。p53の核外移行及びビメンチンへのアンカーリングがp53依存性細胞死の抑制に関与することが示唆された。
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