研究概要 |
T細胞の膜上には主要組織適合性抗原を認識する受容体が存在しており,T細胞抗原受容体(TCR)と呼ばれている.TCRはαβγδεζ鎖の複合体からなり,αβ鎖は抗原結合部位,γδεζ鎖は細胞内情報伝達系に関与する部位であると考えられている.本研究では,非刺激,αあるいはβサブユニット抗体による架橋刺激(キャッピング誘導刺激),あるいは標的細胞との接触刺激などの状態における細胞障害性T細胞のTCR各サブユニットの動態を多様な免疫電顕法を用いて明らかにするとともに,膜脂質の局在化との関連性を検討する.本年度は膜タンパク質分子の局在化にコレステロールやスフィンゴミエリンなどの膜脂質が関係している可能性が示唆されており,また,LckなどのSrcファミリーのPTKsがこれらの脂質分子にアンカーされている可能性が示唆されていることから,急速凍結・凍結置換・低温樹脂包埋法によるスフィンゴミエリンの検出を試みた.細胞を加圧式凍結装置で急速凍結,アセトン凍結置換,-40℃でのHM20紫外線重合包埋を行った.スフィンゴミエリンの検出は,本脂質に特異的に結合するライゼニンにマルトース結合蛋白を結合させた融合蛋白質をプローブとして第一の反応を行い,その後,マルトースに対する抗体を反応させ,最後に二次抗体を標識したコロイド金で反応を行った.スフィンゴミエリンの局在を示すコロイド金粒子が細胞膜上に観察された.従来,凍結超薄切切片法でなければ膜脂質の検出は不可能であると考えられてきたが,今回の結果は急速凍結・凍結置換・低温樹脂包埋法での検出の可能性を強く示唆しており,TCRとの二重標識を試みる予定である.
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