研究概要 |
リンパ球の体内巡回においての血管外遊出機構の解明の一環として,マウスの種々の二次リンパ組織の高内皮細静脈(HEV)において,リンパ球と内皮細胞との接着を媒介する2種のホーミングリガンド,L-selectinリガンド(LSL)とMAdCAM-1の局在を免疫組織化学的に検索した.リンパ節HEVは全てLSLを発現しているが,末梢リンパ節とされていた深頸リンパ節,顎下リンパ節のHEVの一部はMAdCAM-1を常に発現していた。粘膜付随のリンパ組織のパイエル板(PP)ではHEVはほとんどMAdCAM-1のみを発現しているが,鼻咽頭粘膜付随リンパ組織(NALT)では多くのHEVがLSLを発現し,少数のHEVがMAdCAM-1を発現しており,発現様式がPPとは明らかに異なっていた。2種のホーミングリガンドの発現様式は,リンパ組織の構造によって異なるのではなく,その存在部位に依存しており,リンパ器官毎に異なるリンパ球ホーミング機構の存在を示唆している。 また,培養液で血管潅流を行い,その後0-30分静置したラットの鼠径リンパ節のHEVについて走査電顕および透過電顕観察を行い,リンパ球のHEV血管壁通過の初段階の形態変化を明らかにした。高内皮細胞(HEC)に接着直後には,リンパ球細胞表面全体に微絨毛が残っている。次に,血管腔側の細胞表面は微絨毛が消失し平滑になり,微絨毛はHECと面する細胞表面上に偏在し,その先端でHECの細胞表面に接着する。さらに,リンパ球の全表面から微絨毛が消失し,広い接触面でHECに接着する状態に移行する。この変化は,リンパ球がL-selectinとそのリガンドを介した最初の弱い接着からLFA-1とICAM-1を介した強い接着への移行時の形態変化を表していると考えられる。その移行期の偏在した微絨毛の出現は,移行期における微絨毛の重要性を示唆している。
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