研究概要 |
1.低酸素暴露解除後の微細形態学的および免疫組織化学的検討(平成12年度) 低酸素環境下における動脈系化学受容器(頚動脈小体)のこれまでの研究は、低酸素暴露が及ぼす変化を調べたものが主であったが、今回は低酸素暴露解除後の頚動脈小体における形態変化ならびに神経支配の変化について検討し、以下のような結果を得る事が出来た。 3ヶ月間の慢性低酸素暴露(Hypocapnic Hypoxia)後、正常大気圧環境に戻した(1ヶ月後)ラット頚動脈小体は、低酸素暴露で肥大した血管系はコントロールの血管系に近いレベルにまで戻り、それに伴い頚動脈小体自体の大きさは縮小傾向を示した。一方、各種神経ペプチド抗体(SP,CGRP,VIP,NPY)を用いた免疫組織化学的検討により、SP、CGRPおよびVIP免疫陽性神経線維の分布密度には大きな変化は認められなかったが、NPY免疫陽性線維の密度には有為な増加傾向が認められた。 これまでの研究成果から、慢性低酸素暴露時における頚動脈小体内の血管系拡張には、有為に増加する血管拡張性のVIPが関与する可能性を示唆して来たが、今回の低酸素暴露解除後に起こる小体内の血管収縮には、有為な増加傾向を示した血管収縮性のNPYが関与する可能性を新たに見い出した。 2.低酸素暴露解除後の化学受容細胞内のカルシウム測定(平成12年度) Fura 2による細胞内カルシウムの動態解析を行なった。化学刺激に対して、過分極応答する化学受容細胞(glomus cells)と脱分極応答する化学受容細胞が見られるが、求心性神経線維の終末に活動電位が発生するのは、脱分極する化学受容細胞とシナプス結合する部分だけであった。求心性には活動電位はあまり発生しない。相接する化学受容細胞間はgap junctionにより相互作用が起こる。求心性線維の活動電位は逆行性に他の化学受容細胞に影響し、その感度を修飾する等の点が明らかとなった。
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